【解説】医療レーザー脱毛は“永久減毛”?「永久脱毛」の真の定義

この記事の対象:ヒゲ脱毛など医療レーザー脱毛を受けようと思っている人。「永久脱毛」の定義が知りたい人。

こんにちわ。所長 (@otokono_biyou) だ。

今日は「永久脱毛」という言葉の定義について紹介する。

以前こちら☟の記事でヒゲ剃りによる悪影響を解説し、お肌のためにもヒゲ脱毛を受けてほしいことを薦めた。

【No more ヒゲ剃り!】ヒゲ剃りダメージの解説とヒゲ脱毛のすすめ

もちろん、脱毛エステサロンでの光脱毛ではなく、きちんと医療レーザー脱毛による施術を受けて頂きたいのだが…
その前に、医療レーザー脱毛でいわゆる「永久脱毛」は可能なのか?ということを知っておこう。

世間に溢れるなんちゃって定義ではなく、本来の正しい意味を理解して脱毛に臨んでほしい。

結論:「永久脱毛(Permanent hair removal)」と「永久減毛(Permanent hair reduction)」が日本では区別されていない

詳しいことは後述するが、まずは下表が結論である。
なにが言いたいかというと、日本では本家(アメリカ)の区別がごちゃ混ぜにされ使われているということだ。

日本語の「永久脱毛」の定義
  • removal:除去、取り除くこと
  • reduction:減少、縮小

“電気(ニードル)脱毛”とは毛根に一本一本針を刺すやつだ。痛いぞ。

ニードル脱毛ニードル脱毛とは?仕組みとメリット・デメリットを解説

日本語の正式な定義は存在しない

本家(=アメリカ)と書いたが、そもそも日本にオフィシャルな「永久脱毛」の定義は存在しない。

厚生省は電気脱毛や医療レーザー脱毛を医療行為として管轄し、使用できる医療機器を承認はするが、その効果:つまり永久に毛が生えないかどうかに関しては特に規定していない。

例えば、「GentleLasePro」というレーザー脱毛機は下記の通り承認されているが、使用目的を規定しているだけである。
さらに注目すべきは「長期的な減毛」という文言。

使用目的
本品は、レーザの選択的熱作用により、長期的な減毛を目的とした装置である。

承認条件
本品の適応に関連する十分な知識・経験を有する医師が、講習の受講等により、本品の使用に関する技能や合併症等に関する知識を得た上で、本品が適切に用いられるよう、関連学会と連携の上で必要な措置を講ずること。

薬生機審発0110第4号

さらに、「電気脱毛行為は医療行為なので、医師以外の者が行えば法律違反でっせ!」ということを伝える文書(昭和59年11月13日医事第69号)においても、

いわゆる「永久脱毛」行為について

という文言を使っている。
厚生省の扱いではそんな言葉は正式に定めておらず、「」括弧付きの言葉なのだ。


では、日本の巷に流れる、いわゆる「永久脱毛」とは何で規定されているのか?
それは、アメリカのFDA(日本でいう厚生省)の定義に乗っかったものである。

FDA(アメリカ食品医薬品局)

アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration; FDA)は、アメリカ合衆国保健福祉省(Department of Health and Human Services, HHS)配下の政府機関。連邦食品・医薬品・化粧品法を根拠とし、医療品規制、食の安全を責務とする。

FDAは食品や医薬品、さらに化粧品、医療機器、動物薬、たばこ、玩具など、消費者が通常の生活を行うに当たって接する機会のある製品について、その許可や違反品の取締りなどの行政を専門的に行う。

wikipediaより

冒頭の結論の表にまとめたようい、FDAでは電気脱毛のみが唯一の“Permanent hair removal”、つまり永久脱毛だと定めている。

そして医療レーザー脱毛には、“Permanent hair reduction”という別の言葉を充てている。
便宜的に以後これを「永久減毛」と訳そう。

所長

先程、厚生省も「長期的な減毛」と使っていた。

FDAの電気脱毛に関する見解【Permanent hair removal

では、それぞれの定義を紹介する。

まずは“Permanent hair removal”(永久脱毛)からだ。
原文と日本語訳を併記する。

Epilators: Needle, Electrolysis, and Tweezers
Medical electrolysis devices destroy hair growth with a shortwave radio frequency after a thin probe is placed in the hair follicle.  Electrolysis is considered a permanent hair removal method, since it destroys the hair follicle. It requires a series of appointments over a period of time.

脱毛器:針、電解、およびピンセット
医療用電解装置は、薄いプローブが毛包に配置された後、短波無線周波数で毛の成長を破壊する。電気分解は、毛包を破壊するので、永久脱毛方法と考えられている。一定の期間にわたって一連の予約が必要です。

FDA

FDAのレーザー脱毛に関する見解【Permanent hair reduction

続いて、レーザー脱毛の扱われ方である“Permanent hair removal”(永久減毛)について。

Permanent hair reduction is defined as the long-term, stable reduction in the number of hairs re-growing after a treatment regime, which may include several sessions.

The number of hairs regrowing must be stable over time greater than the duration of the complete growth cycle of hair follicles, which varies from four to twelve months according to body location.

Permanent hair reduction does not necessarily imply the elimination of all hairs in the treatment area.

FDA

パラグラフを1つずつみていこう。

  • 「永久減毛」は数回にわたる施術後、再生する毛の量が長期間安定して減少すること。
  • 再成長する毛の量は、通常の毛包の成長サイクル ~これは体の箇所により4~12ヵ月の範囲で変化する~ よりも長期にわたって安定していなければならない。
    ※つまり、仮に通常の毛周期が6か月の部分に脱毛施術したら、その部分の毛は安定的に6か月以上生えてはいけないということ
  • 「永久減毛」は必ずしも施術部分のすべての毛の除去を意味するものではない。

さらに、レーザー脱毛は永久脱毛ではなく、永久減毛だと明確に述べている。

although laser treatments with these devices will permanently reduce the total number of body hairs, they will not result in a permanent removal of all hair.

これらの機器によるレーザー処理は、毛の総量を減少させるが、すべての毛を除去するわけではない。

Laser Facts |FDA

まとめ:「永久減毛」でもレーザー脱毛がよい!

以上で概ね言いたいことは伝わったはず。
言ってしまえば、医療レーザー脱毛も未来永劫に毛が生えないことを保証しているわけではないということ。

ただし、レーザー脱毛を否定するわけでは全くなく、コスパや効率、痛みの面から電気脱毛より優れていると思っている。
ヒゲ脱毛を含め、色素沈着等でレーザー照射不可などの場合を除くほとんどの部分でレーザー脱毛で施術をおすすめする。


以下は補足なので、忙しい人は飛ばして貰ってOKだ。

  • 3回施術を受けた6か月後、67%以上の減毛であること
  • 最終脱毛後再生率が20%以下であること

これらネットでよく見る、あたかも正式な定義のように扱わているものについても調べてみたので、興味がある人は続けて次章へどうぞ。

ネットでよくみる「永久脱毛」の定義の出処は?

ネットでよく見る定義。
まずはGoogle先生に聞いてみよう。

2019年2月現在、「永久脱毛 定義」でググると検索結果約 109,000

所長

ちなみにこの記事を初投稿した2018年7月で約73,300 件。半年で増えすぎ(笑)

Google検索結果

表示結果の上から順番に確認する。
先に上位表示の内容だけまとめて、最後にその内容に言及する。

1番目

検索1番上はこちら。
定義は、電気脱毛協会(AEA)から、とある。
日本において定義が存在しないのはそのとおり。

最終脱毛から1ヵ月後の毛の再生率が、20%以下である脱毛法であること

ネットでよく見る永久脱毛の定義-1番目
  • ページタイトル:「永久脱毛の定義と基礎知識」
  • サイト:医療脱毛なら横浜の美容皮膚科メアリクリニック
  • URL:https://depilation-cl.com/knowledge/forever
  • 出典:電気脱毛協会(AEA)
  • 原文リンク等:なし

2番目

検索結果上位2番目のサイトでは、AEAとFDA、2つの定義を紹介している。
ダブルスタンダードなのか?

  • 電気脱毛協会の「永久脱毛」の定義:脱毛施術1カ月後の時点で、毛の再生率が20%以下
  • FDAの「永久脱毛」の定義:脱毛施術3回を行った6カ月後に67%(2/3)以上の毛が減っている
ネットでよく見る永久脱毛の定義-2番目
  • ページタイトル:「永久脱毛とは?永久脱毛=一生毛が生えてこないことじゃない」
  • サイト:脱毛デレラ
  • URL:https://datumou-derella.jp/eikyudatumoutoha/
  • 定義出典:電気脱毛協会(AEA)、FDA
  • 原文リンク等:なし

3番目

検索結果上位3番目は【医師監修】とのこと。
多少の文言の違いはあれど、基本的に2番めと同じ。
リンクはついているが、団体サイトのトップページへのリンクで原文は不明。

  • 米国電気脱毛協会(American Electrology Association)
    ⇒「最終脱毛から1ヶ月後の毛の再生率が20%以下の状態」
  • 米国FDA(Food&Drug Administration)
    ⇒「3回照射後、6ヶ月経過した時点で67%(2/3)以上の毛が減っている状態」
ネットでよく見る永久脱毛の定義-3番目
  • ページタイトル:【医師監修】”永久脱毛”の定義とは?一生ムダ毛が生えてこない?値段・回数・期間までじっくり紐解きます
  • サイト:惚れ肌白書
  • URL:https://horehada-hakusho.jp/permanent-hair-removal-definition/
  • 出典:電気脱毛協会(AEA)、FDA
  • 原文リンク等:なし(サイトトップページ)

4番目

4番目は、メンズ脱毛大手のメンズリゼ。

こちらは、1番目と同じくAEAのみ。
FEAよりAEAの方が権威があるのか……?

米国電気脱毛協会(American Electrology Association)は『最終脱毛から1ヶ月後の毛の再生率が20%以下である脱毛法』が永久脱毛であると定義しています。

ネットでよく見る永久脱毛の定義-4番目
  • ページタイトル:「永久脱毛」の定義について
  • サイト:メンズリゼ
  • URL:https://www.mens-rize.com/knowledge/permanence.html
  • 定義出典:電気脱毛協会(AEA)
  • 原文リンク等:なし

5番目

最後の5番目は、AEAより。

ここで初めて、「永久減毛(Permanent hair reduction)」についても言及されている。
せっかくなので、ハーバード大学の提唱した定義も教えてほしい。

ムダ毛の再生率が20%以下=「永久脱毛」

ネットでよく見る永久脱毛の定義-5番目
  • ページタイトル:「永久脱毛は本当に生えてこない?永久的に毛をなくす方法は?」
  • サイト:Julie(永久脱毛ジュリー)
  • URL:https://julie-expo.org/clinic/permanent/
  • 定義出典:電気脱毛協会(AEA)
  • 原文リンク等:なし(サイトトップページ)

以下、6、7、9位は同じように「再生率」を用いたAEA、FDAのいづれかの定義。

  • 6位:AEA | 脱毛クリップ
  • 7位:AEA、FDA | 脱毛ポリス
  • 9位:AEA | 脱毛トーク

しかし!
8位のリゼクリニックで、初めてこれまでにない(数値に言及しない)記載。

メンズリゼはAEAの定義を引用しているのに、どういうことだろう……

「永久脱毛」とは、永久に1本も毛が生えてこないということなのでしょうか?

残念ながら、答えは「NO」です。

現状、日本では明確な定義がありませんが、簡単に言うと永久脱毛とは、『高い減毛率を長期間にわたり維持できる脱毛法』とお考えください。
FDA(アメリカ食品医薬品局)※1 によると、永久脱毛の定義は、
一定の脱毛施術を行った後に再発毛する本数が、長期間において減少し、その状態が長期間に渡って維持されること。とされています。
※1 米国の政府機関で「保健・福祉省」に属します。

リゼクリニック

10位においても、AEAとFDAの再生率の定義も記載してあるが、赤字部分についても言及している。

本当に脱毛サロンや医療脱毛クリニックでの脱毛で「永久に」1本も毛が生えてこなくなることはあるのでしょうか。残念なことに、答えはNOです。

日本では「永久脱毛」に対しての定義がありません。一番近い表現をするならば「有効な減毛効果が長期間にわたって持続している」状態となります。

米国電気脱毛協会では、永久脱毛は「最終脱毛から一か月後の毛の再生率が20%以下である脱毛法」としています。FDA(アメリカ合衆国食品医薬品局)※1では「レーザーを3回照射後、6か月を経過した時点で67%以上の毛が減っている状態」を「永久脱毛」と定義しています。

全身脱毛完全ガイド
  • ページタイトル:「医療脱毛の定義とは?永久脱毛の効果や価格について」
    link→「医療脱毛で永久脱毛はできない?永久脱毛の効果や、価格、完了までの回数」
  • サイト:全身脱毛完全ガイド
  • URL:https://全身脱毛完全ガイド.jp/howto_eikyu.html
  • 定義出典:FDA

AEAとFDAの「再生率」に言及した定義の原文(英語)見つからない

さて、FDAやAEAのサイトでそれらしいキーワード:
(fda, aea, definition, permanent, hair, removal, reduction, laser, electrolysis, needle, 6 months, 1 month,  67%, 20%など)
を組み合わせて検索したが全くそれらしい原文にヒットしない。

だれかどこに書いてあるか教えてほしい・・・

ちなみに、FDAより引用数が多かったAEA(アメリカ電気脱毛協会)だが、電気脱毛業者の業界団体みたいなものだ。
政府機関であるFDAに監督される側である。
権威的にはどう見ても、「FDA」>>>>>「電気脱毛協会」となるはず。

事実、AEAのサイトでも「電気脱毛(electrolysis)こそがFDAが認めた唯一の永久脱毛だ」と強調している。虎の威を借る状態である。

Does electrolysis work?
Absolutely. Electrolysis is the only method approved by the FDA for permanent removal of unwanted hair. As the hair is treated, regrowth is prevented rather than just removed temporarily. Only electrolysis provides both hair removal and hair elimination.

電気脱毛はうまくいきますか?
もちろんです。電気分解法 《毛根・腫瘍などを電流で破壊すること》は、不要な毛を永久に除去するためにFDAによって承認された唯一の方法です。毛を処理すると、一時的に除去されるのではなく、再成長が防止されます。電気分解法のみが除毛と脱毛の両方を提供します。

Essential Facts|American Electrology Association

ネットでよく見るAEAなどの「再生率」の定義は、「永久脱毛」の定義として正しくないと思われる

ということで、AEAとFDAの「再生率」については勝手な想像だが恐らく現在もはや有効でない古い定義を最初に誰かが日本語で書き、もっともらしい機関の名前があるので波及していったのだと思われる。

または、「永久脱毛」の定義というよりは、脱毛機器の承認のために用いる数値的な閾値かもしれない。

最後に今回の「定義」問題について、僕がもっとも合理的だと思う説明を紹介する。

日本の「永久脱毛」の合理的な説明
エースクリニックより
  • ページタイトル:「今更聞けない!?永久脱毛とは?」
  • サイト:エースクリニック
  • URL:http://www.datsumou-ace.com/knowledge/1654/

<おわり>

参考海外サイト記事

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